こだわり物理エンジンとは、未踏IT人材発掘・育成事業の支援を受けて発明・開発された、三次元 CG アニメーション (映画、ゲームなど) を作成するための物理エンジンです。従来の二次元セルアニメのような「デフォルメ」を三次元 CG でも表現できるようにすることを目標にして開発されました。具体的には、物理演算を走らせながら、カメラの視点に応じて「揺れもの」 (髪の毛、衣服など) の形状をコントロールすることができます。
本物理エンジンは、あくまで従来の物理エンジン (Bullet, PhysX, ODE など) にはなかった新しい機能の実現方法とその実用性を提示するための基礎研究用のプロトタイプシステムであるとお考え下さい。使用に関しては、ご自身の物理エンジンに組み込んで頂くか、従来の物理エンジンと組み合わせて使用して頂くことを想定しています。
実際にこだわり物理エンジンを動かしているデモプログラムです。ウェブブラウザ上で動作しますが、実行するには Unity Web Player をインストールする必要があります。メンテナンスの都合で、公開を終了しました。
うさぎの耳が、どの角度から見ても「良い感じ」の形で揺れるように設定した場合の動画です。耳の形が視点に応じて動的に適応し、いつでもカメラの方を向くようになっています。
また、このシステムは衣服の揺れに対しても用いることができます。これは初音ミクのスカートに対して本物理エンジンを用いている動画です。スカートの内部のコンテンツが見えそうで見えないという、所謂「鉄壁のスカート」と呼ばれる効果を実現した例です。このような効果は自由視点の 3DCG ゲームなどを開発する上で非常に有用であると考えられます。
その他に「前髪が目を隠さないように避ける」、「どの角度から見てもアホ毛が同じ方向に跳ねている」などの効果も実現可能です。他の動画も随時アップロード予定です。
こだわり物理エンジンで使われている技術 (物理シミュレーションのためのアルゴリズム) は、Disney Research Zurich や NVIDIA PhysX Research などによる最先端の技術を更に独自に拡張することで実現されているものであり、学術的にも新規性のあるものです。この技術は学術論文としてまとめられ、コンピュータグラフィクスに関する国際会議 (SCA '13) にて発表されました。また、論文 PDF やその他資料が web 上に公開されています。
実行には Unity が必要です。
こだわり物理エンジンのソースコードは MIT ライセンスの元で公開されています。
商用利用等は制限されていませんが、開発者にご一報頂けると幸いです。
現在ソースコードの使用方法に関するドキュメントを作成中です。いましばらくお待ち下さい。
簡単なチュートリアル動画がありますので、まずはそちらをご覧下さい。
また、上でダウンロード可能な「Unity サンプルプロジェクト」は既にセッティング済みの状態となっているので、そちらも合わせて参考にして下さい。
当プロジェクトは IPA (独立行政法人 情報処理推進機構) の 未踏IT人材発掘・育成事業の支援を受けて進められました。この場を借りて、お世話になった皆様、特に原田康徳先生、IPA の皆様、その他未踏関係者の皆様に感謝申し上げます。また、東京大学五十嵐研究室の皆様にもこの場を借りて感謝申し上げます。
当ウェブページに掲載しているコンテンツの一部で、以下の 3DCG データを使用させて頂いています。
「初音ミク」はクリプトン・フューチャー・メディア株式会社の著作物です。「Big Buck Bunny」は Blender Foundation の著作物です。